「地域の宝(子どもたち)を学校と地域が一体となって育んでいきましょう」
〜地域総がかりで子どもたちの健やかな成長を支援していきましょう〜


 皆さんおはようございます。
 ご紹介いただきました中川でございます。どうぞよろしくお願い申します。
 ただいまのお二人のすばらしい実践をお聴きしましてとても感動しています。私は、ご発表に感想や意見を述べる立場にはありませんが、私の感想を少し述べさせていただきます。
 本市の人材バンクに登録されている皆様方のご活躍が目に浮かぶようです。網津小学校での「盲導犬と暮らしている方の生き方に学ぼう」、宇土小学校での「のり養殖に関する学習」は、学校の先生方だけではとうていできない学習です。専門的な知識・技能をお持ちの地域の方の支援なくしては展開できない学習です。すばらしい取り組みに敬意を表します。本市の子どもたちは、地域の方々の支援で確かな学力を身につけていると思いました。
 皆さんは、「学力」という言葉を聞いてどんなことをイメージされますか?「全国一斉学力テスト」などの言葉が思い起こされますか?文部科学省が小学6年生と中学3年生を対象に、毎年学力調査をします。これをマスコミでは「学力テスト」と称して報道しています。静岡県知事が学力テストの結果を公表すると言って物議を醸しました。テストと言えば、評価です。自分の学力はどの位の位置にあるか、我が校の学力はどの位置にあるか、学力が高いか低いかなど気になるところですが、文科省が小学校6年生と中学校3年生を対象として実施しているのは学力テストではなく学力調査です。全国の子どもたちの学力や学習状況を把握して指導法の改善などに役立てるべく調査するものです。この学力を大阪大学教授の志水宏吉先生は、「樹のイメージ」でとらえた「学力の樹」として説明しておられます。 


 先生は、知識・理解や技能からなる学力をA学力と称して生い茂る「葉」、思考力・判断力・表現力からなる学力をB学力と称してすっくと伸びた「幹」や「枝」、意欲・関心・態度からなる学力をC学力と称して大地をとらえる「根」に例えて、3者が一体となって成長し、「学力の樹」を形づくっていくと説明しておられます。
 もう少し詳しく言いますと、子どもたちが学びとる知識や技能が、1枚1枚の葉っぱであり、生い茂った葉っぱが大きな力を発揮するように子どもの成長に不可欠な要素だと言っておられます。葉っぱが秋になると枯れ落ちたり、春になると生え替わったりするように、学習によって新たな知識にすることが大切だと言うことです。

 C学力の「根」は、地中の隠れたところにあり、目には見えませんが樹を支え、地下から栄養や水分を吸収するという大事な役割がありますね。子どもの成長にとって、とても重要な意欲・関心・態度がこれにあたると説明しておられます。
 「幹」や「枝」にあたるのが、思考力・判断力・表現力、これをB学力と説明しておられます。樹は、太陽の光の栄養分を葉から根へつなげます。根から水分や栄養分を吸い取り枝や葉に受け渡していきます。これらの働きを通して、幹や枝を太らせていきます。幹は大樹をがっしりと支えます。大樹にとって、葉も幹も根もどれも欠くことのできない大切なものです。

 私はこのことを、ただいまの発表に当てはめてみました。これまで、知識・理解は、学校にお願いするとしていました。しかし、「盲導犬と暮らしている方の生き方に学ぼう」で盲導犬と暮らしている方の話を聞くことで、盲導犬に関する知識理解が深まります。盲導犬が目の不自由な方を支えていることがよく分かります。また、目が不自由な方の盲導犬に対する思いなどがよく分かります。「のり養殖に関する学習」も同じことが言えます。のり養殖に従事している人の思いや苦労、のりを育てる技術など、専門家の方のお話を聞いてのり養殖についての理解が深まります。このように知識理解を育む観点からも地域の方々の支援が必要なのです。
 また、網津小の先生がボランティアの方へのお礼状の一部を読まれました。感謝の気持ちがよく表現されています。表現力は幹にあたるものです。表現力は、自分の思いを表現する機会が多ければ多いほど身についていきます。そして、「本日はありがとうございました。」から、「私が分からなかった時、ヒントを出していただきよく分かりました。ありがとうございました。」など、感謝の気持ちが生まれた具体的な場面を思い起こして礼状を書いたり、発表したりするようになります。表現力が高まります。具体的な事例をもとに感謝の気持ちを伝えられると、伝えられた私たちもさらにうれしくなります。例えはよくありませんが、旅行に行った時、親戚や近所の人にお土産を買って帰りますね。お土産をもらった人は「ありがとう。」とお礼を言います。これを、「この前いただいたお菓子は、レモンの香りがし、甘酸っぱくて、とてもおいしかった。ありがとうございました。」などと食べてみなければ表現できないような言葉を添えて感謝の気持ちを伝えられるとうれしさが倍加しますね。これと同じです。思考力や判断力、興味・関心・意欲についても、5年生の子どもがのり養殖の話を聞いて、「のりの生産技術が向上して、生産量も増えたのに、どうしてのり養殖を仕事とする人が少なくなっているのですか?」と質問したり、後継者を増やす方策を提案した子どもがいたと言うことです。のり養殖漁家と一緒に学習したことによって、子どもはB学力、C学力を高めています。皆さんが学習支援、体験活動支援されることで子どもたちの学力が高まっていることを痛感しました。
 さらに網津小の先生の発表の中で、盲導犬に関する学習は保護者も一緒に聞き、保護者も大変勉強になったとの感想があったともおっしゃいました。私は学校に地域の大人へ学習機会を提供して欲しいとお願いしています。網津小学校の例のように、子どもと地域の大人が一緒に学ぶ機会の提供を、私は「義務教育版公開講座」と言っています。この会場に先生方がいらっしゃるなら、是非このことを学校でご検討いただきたいと思います。
 これから子どもたちの学習活動を支援される時、「今私がお手伝いしていることは、A学力を高めるのだろうか。B学力だろうか。C学力だろうか?」などと考えながら支援すると、またこれまでとは違った喜びが生まれてくるだろうと思います。宇土市の人材バンクに登録されている皆さんのますますのご活躍を期待しています。
 レジュメにかえります。本市では、本日お集まりの方々ばかりではなく、民生児童委員さん、地域婦人会の皆さん、老人クラブの皆さんなど、地域の方々が地域の宝である子どもたちの育ちを支援していらっしゃいます。1月、宇土市地域婦人会の皆さんの「青少年健全育成研修会」にお招きいただきました。研修会では、地域の子どもたちの成長を支援している取り組みの発表がありました。通学合宿であったり、清掃活動であったり、自転車の交通安全運動などの取り組みを。本市では、このように「地域の宝は地域で育てる」を日頃から実践しておられます。
 私が本日の演題を「地域の宝(子どもたち)を学校と地域が一体となって育んでいきましょう」〜地域総がかりで子どもたちの健やかな成長を支援していきましょう〜としたのは本市の取り組みをさらに前へ進めていただきたいからです。
 まだ皆さんの記憶に新しいことと思います。今年の2月、川ア市で、中学1年生が遊び仲間に惨殺されるという痛ましい事件がありました。寒い夜、裸で川を泳がされ、殺されたのです。たくさんの花が手向けられている事件現場がテレビニュースで放映されました。亡くなった中学生が大好きだったバスケットボールもそえてありました。中学1年生の子の死を痛ましく思い、花が手向けられとは思いますが、こんなにきつい思いをしているあなたに気づくことができなかった、もっと早く気づいていればあなたを助けることができたのに本当に申し訳ないという思いから花を手向けた人もたくさんいたのではないかと思います。あのような事件を我がまちでは絶対起こしてはならないという思いから、地域の宝である子どもたちの育ちにもっともっと関心を持って、それこそ地域総がかりで子育てに当たらねばならないとの思いから、本日のテーマをこのようにしました。あの事件を遠い世界の出来事と捉えるのではなく、我がまちでも起きるかも知れないと捉え、それを未然に防ぐにはどうすればよいかをみんなで考えることです。その方策の一つが本市の人材活用事業であると思います。本市では、冒頭触れましたように、各地域、各団体で、組織的に子育ての応援をしていらっしゃいます。本市のこのような取組が県下に広まることを期待しています。
 話を本題に戻しますが、レジュメにお示ししていますのは本市における地域とともにある学校づくりの一覧です。学校支援地域本部事業が、鶴城中学校、宇土小学校、花園小学校、宇土東小学校、住吉中学校、網津小学校、緑川小学校で実施されています。放課後子ども教室が、網田小学校で開設されています。このうち、網田小学校、網田中学校、網津小学校、緑川小学校、走潟小学校、そして昨年から花園小学校、住吉中学校でコミュニティ・スクールの指定を受けて、実践しておられます。そして本年から宇土東小学校が熊本版コミュニティ・スクールに取り組んでおられます。
 本市では、今紹介しましたように、以前から地域総がかりの学校経営に努めていらっしゃいます。今、なぜ地域総掛かりでの子ども支援なのでしょうか。
 子どもたちは一人一人かけがえのない存在ですが、様々な人の支えなくしては生きていけません。子どもたち一人一人の能力を伸ばし、将来に夢や希望を持って、自立して生きる力を育てるとともに、思いやりや優しさ、人、社会、自然とともに生きる心を育てることは社会の責務だと思います。
 今、社会は、急激な少子・高齢化進行のまっただ中です。日本創生会議が昨年5月、ショッキングなことを発表しました。2050年の日本の総人口は9700万人程度、2100年には5000万人を割り込むとの推計です。そしてますます人口の大都市集中が起きるだろうと予測しています。持続可能な社会づくりを進める上で、地域づくりは喫緊の課題です。
 今、新たな地域づくりの鍵をにぎるのは学校と言われています。内閣総理大臣の諮問機関であります「教育再生会議」は、学校を核とした地域づくりを進めていこうと提言しています。本市では、学校統廃合はありませんが、天草では、かなりの統廃合が行われています。これからも行われるということです。学校がなくなることで地域の衰退が進んでいます。学校は、地域の文化の中心です。心のよりどころです。これまで見知らぬ人が、子どもを通して顔見知りになり、つながりが出てきます。そして、学校教育を応援する活動を通して地域のことを考え、地域住民同士のつながりも強くなっていきます。これが、学校を核として地域創生です。
 子どもたちを取り巻く状況は以前とかなり変わりました。
 その一つが家庭の教育力の課題です。核家族化や就業形態の変化などによって、親子のふれあいが減少するなど家庭生活に変化が出ています。例えば、子どもたちの生活習慣の乱れによって、学習意欲や体力・気力の低下が指摘されています。そして、経済格差や家族形態の変化が、子どもの教育環境に影響をもたらし、社会問題ともなっています。
 二つは、地域の教育力の課題です。通信機器の普及によりまして、人付き合いの幅は拡大していますが、日常生活の中でのつながりや絆が弱体化するなど人間関係は希薄化しています。例えば、子どもたちの群れ遊びの減少もその一つです。子どもたちの人間関係も希薄化しています。地域の安全安心感確保にも課題が出ています。殺人事件の報道がない日はありません。青少年が事件に巻き込まれています。それは、子どもの生活の変化から生じることもあります。テレビやゲーム、コンピュータ、スマートフォンなどの普及によって、遊びや交友関係が変化しています。誰とでも、見知らぬ人とでも通信機器を通じてつながってはいるもののそのつながりはとても薄いものです。また、多様な価値観を持った人との交流の機会が減少しています。子どもたちの規範意識や社会性も希薄化しています。
 このような子どもを取り巻く環境の中、地域の宝である子どもたちを地域総がかりで育んでいくことは現代社会の課題です。
 これまで話しましたようなことから、平成18年12月施行された教育基本法で、「学校、家庭、地域が一体となって地域ぐるみで子どもを育てることが重要である」と規定されました。その取り組みの一つとして、平成19年度から「放課後子ども教室」が、平成20度から「学校支援地域本部事業」が始まりました。この両事業より先に平成17年度から「コミュニティ・スクール推進事業」が始まりました。
 その効果については、皆さんはご自分の学校支援活動を通して十分認識のことと思いますが、私が訪問しています上益城教育事務所管内、宇城教育事務所管内、天草教育事務所管内の先生方、ボランティアの方、子どもたち、保護者の方々の声のいくつかを紹介して、学校応援団活動の効果を温めたいと思います。
 始めは、先生方の声です。
・子どもの育ちの姿を地域に示さねば、地域からの信頼も学校応援も望めません。子どもの育ちを地域に見せることができるよう全職員で指導に当たっています。
 次は、本市の網田小学校教頭先生の言葉です。
・子どもたちは1年生の時から学校応援団の姿を見て育ち、ボランティア指導者を生き方のモデルとしています。本校では子どもたちに、『掃除をしなさい』と注意したことは一度もありません。みんな進んで掃除をします。掃除の仕方のアドバイスをすることはありますが。
 天草の校長先生の言葉です。
・子どもが感動した時の表情はきらきら輝いています。子どもは本物に接することで大きな感動を体験します。そこに学校応援団の意義があります。保護者から、地域から子どものためになる提案は拒みません。
 「本物に接する」、「本物に学ぶ」は先ほどご発表になった網津小学校と網田漁協の取り組みですね。
 これも天草の校長先生の言葉です。
・『私たちが演奏する音楽を聴いて喜んでくれる人がいる。』と子どもたちが実感する機会を作ることは、子どもたちの学習意欲の向上につながります。それ以上に、学校が地域の人々の心のよりどころになります。
・学校においでることができない方もいらっしゃいます。公民館(コミュニティセンター)や施設に出向いての出前学習発表会をしています。子どもも大人も互いに元気をもらい合っています。
 次の二つは上益城の校長先生の言葉です。
・これまでの保護者や地域住民の方々による学校支援にとどまらず、子どもも先生方も積極的に地域に出かけ、地域の活性化に貢献できるような双方向性のある関係になることを目指しています。
・学校のありのままを地域の方々にお見せすることで、初めはかなりお叱りをいただきました。でも、次第に、『学校もがんばりよる。自分たちも子どもの育ちに関わろう。』との機運が芽生えました。今では、いろんな分野で地域の協力があります。
 次は学級担任の先生方の言葉です。
・ボランティアの方と授業づくりをしますと、ボランティアの方が『先生方がこんなにきめ細かに子どもたち一人一人のことを考えて授業されるから子どもたちは理解できるのですね。ありがたいです。このことを周りの人にも伝えます。』と言われます。私たちの仕事を地域の方からも評価していただき本当に嬉しいです。
・そろばんの学習では、1グループに1人のボランティアの方がお手伝いをされます。私は、気になる子に集中して指導に当たることができます。私も子どもも心にゆとりを持ってそろばん学習ができます。
・家庭科のミシン操作では、たくさんのボランティアの方に支援していただきます。『糸が切れました。』『ミシンが動きません。』『○○の縫い方が分かりません。』など次から次に子どもたちが助けを求めます。私一人では40人の子どもの求めに応じることは至難の業です。子どもたちの求めにすぐに応じていただくボランティアの方に感謝しています。
・授業後、ボランティアの方から子どもの思考の様子やためらい、自信、不安な様子などを聞くことがあります。私には見えていなかった子どもの一面を教えていただき子ども理解にとても役に立ちます。
 次からは、子どもたちの言葉です。
・ボランティアの人が、『字が上手だね。読みやすいなー。』と言ってくれてうれしかったです。
・算数の時間、私が1問間違えた時、『あとちょっとだね。』と言ってくれてうれしかったです。次は間違えないようにしようと思いました。
・ドリル学習が終わって、『がんばったね。』と言ってくれてとてもうれしかったです。
・漢字の練習で、『もちょっと丁寧に書くと、読みやすいよ。』と言ってくれてうれしくなりました。やる気が出てきました。
・地域の人たちが朝は、『おはよう、行ってらっしゃい。』、帰りは『お帰り、学校楽しかった?』と聞いてくれたりしてとてもうれしいです。
・見守り隊の人は、一緒に帰りながら小さい頃の遊びや勉強のことを話してくださいます。昔のことが分かってとても楽しいです。
・(ボランティアは)お仕事ではないのに自分から進んでやるなんて本当にすごいし、かっこいいと思います。今度から僕も進んでゴミを拾ったりしたいと思います。大人になったらボランティアをしたいです。
・僕は野菜が好きではありませんでした。自分が知っている人が作った野菜はおいしいです。これからは野菜を食べようと思います。
 次からは、保護者の言葉です。
・日頃無口な娘が、学校から帰って来るなり、『お母さん見て、これ私が作ったのよ。』とミシンで縫ったナップサックを見せてくれました。そして、家庭科の授業のことを目を輝かせて話してくれました。子どもにこんな感動を与えてくださるボランティアの方に感謝しています。私も学校応援団をしたいと思っています。
・『算数の勉強はすかん。』と言っていた息子が、子ども教室でそろばんを習い始めてから『計算が速くなったよ。』とか『算数が面白くなった。』などと言って、そろばんを毎日練習しています。子ども教室で地域の方がそろばんを教えていただくおかげです。感謝してます。
・町商工会の新年の広報に掲載された我が子の珠算検定試験の結果を見て、『○○ちゃんはすごいねー。珠算で3級に合格したてね。』とか『○○ちゃんは頑張り屋さんだから1級を目指さにゃんね。』などと近所の人や親戚から声をかけていただきました。親子とも嬉しくなりました。
 次は、コーディネーターの言葉です。
・お忙しい中で学校応援に来ていただいています。おもてなしの心でお迎えし、満足感いっぱいでお帰りになるようお見送りしています。
・先生方は子どもたちに、『ありがとうございました。』だけでなく、どこがどうありがたかったのかなどを具体的な例を挙げて感謝の気持ちを表すようお願いしています。ボランティアの方も、『自分の手伝いがこんなに役に立っているかと思うとやりがいがあります。』などと、とても喜んでいらっしゃいます。
・90歳過ぎの方が、『自分が元気なうちは子どものためにできることを続けたい。』と、路線バスに乗って読み聞かせにおいでています。「地域の子は地域で育てる」という言葉を実感しています。
 次は、ボランティアの方の手記や言葉です。
・2年前から学校支援ボランティアに参加しています。月4回ほど学校に足を運んで、「傾聴」、「○付け」、夏場は、グリーンカーテンの「野菜植え」の学校支援ボランティアを行っています。
 子どもたちも顔を覚えてくれて、親しみを持ってくれます。先生や親とは違う立場の者が教室に入ることで、先生にも子どもたちにも私たちにも、いい意味での緊張感があると思います。
・短い授業時間でも、解いた問題に○をつけてあげる○付けボランティアは、子どもたちの喜ぶ顔や悩む顔を目の前で見ることができます。孫と一緒に一喜一憂しているようですごく感動します。
・この歳(76歳の女性)になって、社会のために役立っていると言うことを実感しています。できる限り学校応援団活動を続けます。
・私は、70歳でそろばん教室を受講しました。60年ほど前、そろばんを学校で少し習いました。それ以来のそろばんです。ですから、「1+1」から教えて頂きました。10までの足し算・引き算ができるようになり、見取り算の練習に入りました。そして、かけ算・割り算を教えて頂きました。練習を始めて6ヶ月後、8級の検定試験を受けました。試験を前に、心臓がどきどきするのが分かります。試験となるといくつになっても緊張するものです。試験に合格し、先生から合格証を戴いたときのうれしさは忘れることができません。小中学生の頃にかえったようでした。それから、そろばんのおもしろさが分かり、毎日、時間を見つけて練習しました。4級の試験では、210点での合格でした。練習の時は、ほとんど満点が取れていました。合格はしたもののあまりうれしくありませんでした。そこで、家で一人、試験のつもりでやってみました。かけ算・割り算・見取り算すべて満点でした。思わず、万歳と叫びました。
 小学校のそろばんの勉強の手伝いに行きました。親指だけで珠を入れる子、珠を入れるのは親指か人差し指か迷っている子、5珠が下りているときの足し算の仕方が分からないで悩んでいる子、それらが手に取るように分かります。「7はいくつで10になるね」などの声かけで、「分かった」と珠を動かしていきます。分かったときのあの笑顔は忘れることができません。私のちょっとした声かけで子どもが分かったときは、私もうれしくなりました。そろばんの勉強が終わって、給食をごちそうになり子どもたちといろんな話をしました。
 近くのスーパーで買い物をしているときなど、「あっ、そろばんの先生。こんにちは」と挨拶する子が増えました。私も、「そろばんの勉強はしているね?」「先生の話はちゃんと聞いているね?」などと声をかけるようにしています。
 そろばんの練習を通して、新しい友だちができました。子どもたちとも顔見知りになりました。これは、私の一生の宝物です。
・平成11年から公民館講座で習字を習い始め、今では5段の段位をいただいています。学んでいるうちに小学校からお話しがあり、7〜8年前から子どもたちに習字を教えるようになりました。手に手を添えて、子どもたちと触れ合いながら、正しい書き方を練習しています。みんな素直でかわいらしい子どもたちです。
 初めてボランティアに参加するときは、すごくプレッシャーを感じましたが、1度参加してみるとすごく楽しかったのです。1日あたり2時間の授業で、月1〜2回参加しますが、毎回あっという間に時間が過ぎます。それに、授業に参加するわけですので、子どもたちと一緒に自分も学ぶことができ、目から鱗の経験をさせていただいています。
 集中力が付く習字は、心を落ち着かせることもできます。このボランティアが子どもの成長につながると思うととても嬉しいです。
・学校や地域の行事は近所のおじちゃんおばちゃんたちが、縁の下の力持ちを買って出て成り立つものです。今まさに「自分の出番」が来たと思って、その役割を担っています。6年前からボランティアで学校に行っています。子どもの成長には驚かされます。できないことに一生懸命挑戦して、それができたとき、涙が出るほど感動しました。
 一生涯を仕事一筋で終えるのではなく、自分が人生を通して経験したこと、学んだことを地域の子どもたちに伝えてあげたい、そんな思いで始めたボランティアは、今では私の生きがいです。
 いかがですか。おそらく皆さんも同じようなことを感じたり、体験したりなさっていることと思います。
 これまでいろいろなことを話してまいりましたが、学校を支援することによって子どもは確かな学力と豊かな心を身につけ、地域は学校支援活動を通して活性化するという、学校・地域双方にとって効果がなければこの活動は継続しません。私は、学校を縁とした「学縁」づくりを地域づくりへつなげることが肝要だと思っています。
 本市の人材活用事業がますます盛んになりますことを祈念して話を終わります。
 ご静聴ありがとうございました。